今回は、田島列島先生の「水は海に向かって流れる」の感想を書いていきたいと思います。
2020年オトコ編の「このマンガがすごい!」5位の作品です。
「おー、なるほど!確かにこの漫画はすごい!」
と思ったのが、読み終わった後の素直な感情でした。
登場人物たちの心情がタイトル通り、水が海に流れるように読み手の感情も複雑な感情から一つの感情へと着地していく心理描写の描き方が素晴らしかったです。
田島先生の他の作品も読んでみようと思わされる傑作です。
「水は海に向かって流れる」~作品詳細
作者:田島列島
出版社:講談社
ジャンル:日常・恋愛
発行巻数:全3巻
あらすじ
高校への進学を機に、叔父・歌川茂道の家に居候することになった熊沢直達。
しかし駅に迎えに来てくれたのは榊さんという女性だった。
初めは叔父の彼女かと思ったが、案内された家はシェアハウスとなっていて、親に黙って脱サラしたマンガ家(叔父)、女装の占い師、ヒゲメガネの大学教授、どこか影のある25歳OL、そこに高校1年生の直達を加えて、男女5人での一つ屋根の下での奇妙な共同生活が始まった。
共同生活を送るうち、日々を淡々と過ごす25歳OLの榊さんに淡い思いを抱き始める直達だったが、彼女と自分との間には思いも寄らぬ因縁が……。
割り切れないモヤモヤした思いを抱きながら、少年は少しずつ家族を知り、大人の階段を上っていく。
物語は淡々と流れる
叔父の家で住むはずが、なぜかいろいろな人たちと暮らすことになった高校一年生の直達。
そんな家に住む中で、偶然自分の父親がW不倫をしていたことを知ってしまいます。
しかも、その相手は駅に迎えに来てくれた榊さんの母親でした。
直達はW不倫の相手が榊さんの母親だってことは知らなかったけど、榊さんは直達を迎えに行くときに見た家族写真で知る事となってしまいます。
事実を知ってしまった直達は、自分がどのような行動を取っていいかわかりません。
高校生には、荷が重すぎる問題だと思いますからね。
だから、榊さんは自分の胸の内に隠していたんだと思います。
「自分が我慢すれば大丈夫」
自分の母親が不倫して家を出ていった当時から思っていた事を今も続けているだけです。
気性の激しい漫画なら、この時点でお互いに罵り合って言いたい事を言ってから互いを理解して和解する流れだと思います。
お互いに気まずい雰囲気になりながらも、お互いが気を使いあって大きな波風は立たずにちょっと古典的なギャグも交えながら淡々と話は進んでいきます。
宛先の無い怒り
これだけ淡々と作っているのに面白く安心して読んでいられる所が、この漫画のすごい所だと思います。
被害者であり加害者でもある、直達と榊さんは怒りの矛先をどこに向けていいのかで常に悩んでいます。
責められる人は不倫をした当事者だけだという事がわかっているからですね。
他の人に向ける怒りはただの八つ当たりだから。
けど、最後までこの怒りは人にはぶつけませんでした。
若干は怒りが漏れたけど。
我慢するでもなく、自然な流れで二人が抱えていた問題は発散されることになります。
誰も傷つけずに、登場人物全員が思いやりの心をもっている物語でした。
最後に
物語の中への没入感が半端なく読み終わった時には、大きく深呼吸をしてしまいました。
自分が、物語のだれかであるような錯覚に陥ってしまいました。(ちなみにいのまんは泉谷君)
女性作家さんらしく細やかな心理描写がとても良く、たくさんの人の読んでいただきたいおススメ作品です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。したっけね!
[著]田島列島
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