「威風堂々」伊東潤~日本国家を作り上げた大隈重信の一代記

小説

こんにちわ、歴史と漫画好き。
いのまんです。

今回は伊東潤先生作「威風堂々」を読んだ感想です。

国会開設、政党政治移行、内閣総理大臣就任、早稲田大学創設と数々の功績を残した大隈重信さんだが、恥ずかしながら歴史の授業と小説の一端で名前を知ることしかありませんでした。

感情に流されず日本の将来を考え抜いた大隈重信さん、本作を読み終え自分の胸の中にこれからの人生の新たな灯を点けてくれました。

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「威風堂々」~作品詳細

作者:伊東潤

出版社:中央公論新社

ジャンル:幕末・明治維新

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「威風堂々」~あらすじ

天保九年(一八三八)二月一六日。九州の佐賀城下にひとりの男子が誕生した。幼名を八太郎。後の大隈重信である。名君と謳われた佐賀藩主鍋島直正(閑叟)に、その才能を見いだされ、同じく熱い志を持つ仲間たちと、激動の幕末へ乗り出した若き重信。西郷隆盛、大久保利通、坂本龍馬、岩崎弥太郎をはじめ錚々たる志士たちと巡り会い、佐賀の、そして日本の未来のために奔走する! 近代国家・日本の礎を築いた偉人の生涯を描く!
明治維新を迎え、世界に近代国家としてデビューした日本。内実は多くの問題を抱えていた……。西郷隆盛、大久保利通、伊藤博文、山縣有朋をはじめとする、薩長による藩閥政治の巨大な壁にも怯まず、テロに遭い片足を失っても、信念のために邁進する大隈重信。国会開設、政党政治移行、内閣総理大臣就任、そして早稲田大学創設。後の日本の礎を築いた偉人の生涯を描く歴史巨篇。

幕末を超えた大隈重信という人物

幕末と言えば、薩長・新選組・松平容保・徳川慶喜、戦線は北へ北へと伸びていき、内戦の勝者である薩長が政権を握る。

明治維新後は薩長を中心とした藩閥政治が主となり、国よりも自身の地元を主に置くようなイメージが強く、明治期の政権はとてもじゃないが好きになれなかった。
もちろん血を流し貢献した者たちに恩賞は必要だと思うが、本書に出てくるように適材適所に配置されていたのかが毎度疑問に思っていました。

そんな明治維新に関して齧っただけの知識の中に風穴を開けてくれたのが「威風堂々」という作品。
本書の主人公・大隈重信、佐賀県出身で戊辰戦争には参加せずに政務の実力で這い上がってきた人物です。

欲はあれど振り回されず、感情はあるけど感情論で人に当たらず、手を取るときは手を取り合う。
日本の将来を考えた、いや日本の将来の事だけを考えてくれた思考の方だというのが最後まで読んだ私の感想でした。

まあ、最後まで話を聞かずに正論でという言葉で殴りつけていることが多いので若干怖いとは思いましたが、薩長閥と対峙するためには持たなくてはいけない力だったんですよね。
むしろ薩長閥に正面から”否”を唱えられる数少ない人物のように感じました。
その分疎まれることも多いですが、類まれなる実務能力、”人の上に人を作らない”信念、感情に流されないという点はあまりに魅力的すぎる人物でした。

まさか山縣有朋卿と手を取り合っているとは知りませんでした。

日本の将来を本気で考えて

大隈重信が一貫して唱えていたのが、戦争はしてはならない、世界に通用する経済、そして教育。

西南戦争から始まって日清戦争・日露戦争、内戦・対外戦争含めて軍事行動が何度もあった明治期に表立って戦争を否定していた人はいたのかと疑問に思っていて、明治政府ってずっっっと”お金がない!”って言ってたのに何故か軍事行動をしていることにずっと疑問を抱いていました。

戦争に関する小説って、勝ち負けがはっきりしていてドラマ性が作りやすいです。
だから戦国時代に関する小説は数多く散見します。
まあ、日本のみで行わている戦争なので外部からの圧力が掛からないということも大きいと思うのですが。

けどこの頃の日本の状況を考えるとすれば、軍事にかけるお金よりも内政にもっとお金をかけて庶民が自分たちで経済を回せるようにしていくのが最良なんじゃないかと明治期の本を読むたびに考えていました。

本を売るためならもっとドラマチックに書くこともできたと思います。
「叛鬼」や「峠越え」のようにエンターテイメントに振った描き方をして盛り上げどころも作ることができたと思うのですが、一箇所のみの盛り上がりのようなもの作ってしまうと主人公・大隈重信という人間性を描けていないと思うんですよね。

日本の将来を考えて、未来永続的に国家を作り上げていくことって一度の大成功では叶わないですよね。
成功を積み重ねていきながら、良し悪しを整ていくのが明治期の政治家のあり方なんじゃないかなって思います。

私が本作品を読んだイメージは、燃え上がるような大火ではなく、消えてはつけてつけては消える数多くのロウソクのような火というイメージです。
大隈重信さんは一人の力ではなく、国民・国家で小さな火にしようとしたのでしょう。

教育こそ国家の根幹

佐賀時代から教育に対して関心を寄せている場面が多くあります。
あらすじにもあるように早稲田大学の創設者です。

当たり前のように義務教育を受けれて、高校そして大学・専門学校。
今は学ぶ機会を多く与えられています。
そうゆう礎を築いてくれたのが私学を設立して学びの機会を作ってくれた福沢諭吉さんだったり、大隈重信だったりするんですね。

「社会という大洋を航海するには、学問という羅針盤が必要だ」(本書より引用)

大隈重信が創立15周年記念の演説でいわれた言葉の一説です。

自分も親に大学まで行かせてもらいました。
大きな失敗もして働けなくなったこともありました。
それでも学んできた知識を生かして再就職して生活ができています。

今、自分には3歳になる息子がいますが、我が子には大隈さんができなかった海外留学をさせてあげたいと思います。

本書を読み、大隈重信さんから教育の重要性を教えていただき、自分の力では大勢の人の力になることはできないけど今いる我が子に目指す教育の場を与えられるように励んでいきたいと思います。

大隈さん、あなたの目に約百年後の日本はどう写っていますか?

さいごに

「武士の碑」「走狗」と読ませていただくと、今まで点で読んでいた人物や歴史が線で繋がっていく快感を得られました。
ぜひこれからも明治期の偉人を題材にした作品、よろしくお願いします!

ではでは、最後までお読みいただきありがとうございました。
したっけね!

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