伊東潤先生作「走狗」~日本警察の父と呼ばれた男は尻尾を振り続けることは出来なかった

小説

こんにちわ、歴史と漫画好き。
いのまんです。

今回は、歴史小説家伊東潤先生作の「走狗」を読んだ感想・紹介です。

明治維新、”日本警察の父”と呼ばれた川路利良を主人公に幕末~明治維新~西南戦争後までが描かれています。

激動の時代には”人の命”と”権力”が大きく動くという事で、初めは純粋にそしてどんどんどす黒くなっていく緊張感は伊東先生の独特の人物描写がなせる業となっています。

西郷隆盛・大久保利通と薩摩の大物たちの下で立身出世に右往左往する男の物語。

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「走狗」~作品詳細

作者:伊東潤

出版社:中央公論新社

ジャンル:歴史(幕末・明治)

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「走狗」~あらすじ

西郷の信を裏切り、 大久保と国に身を奉じた男。

下層武士から初代大警視(警視総監)にまで上り詰めた 川路利良は、剣の達人にして史上稀なる「国家デザイナー」でもあった―― 。

薩摩藩三巨頭の共闘と愛憎を描く、長篇歴史小説。

戦前の特高警察の前身か?

「日本警察の父」と呼ばれていて、明治維新にフランスを手本に日本式の警察組織を作り上げたのが本作主人公の川路利良です。

表向きは現代の警察組織であることは間違いないのですが、川路が警察を作った時代は政権交代がなったばかりと恐ろしく不安定な国家情勢となっています。
民主主義でまとめ上げるよりも中央集権で国家を安定させなければ、日本は夷敵に攻め込まれて国自体が無くなってしまう恐れがある。

だからこそ不穏分子を取り除く必要悪の存在が必須となり、恩師とも呼べる西郷をも誅殺する組織が必須となりました。
それが川路の作り上げた”スパイをする警察組織”。

川路がやろうとしたことを思い起こすと、明治43年に立ち上げられた日本の特別高等警察、略称・特高警察を思い起こされました。

表の警察組織に裏の警察組織、川路利良が作り上げた警察組織は川路そのもののように光と闇を覗かせていると感じさせられました。

権力者の走狗

元城外士で下級武士の川路、幕末という激動の時代で立身出世に非常に執着する人物に仕立てられています。

始めは純粋に自分自身の成長の為に、しかし西郷隆盛に間諜のような役割をするようになってからは自分の純粋な正義感が少しづつ灰色に染められて行くのが作中からでも伝わってきます。
読んでいて川路が権力に振り回されて自分の欲望が大きくなっていく様子は気持ちのいい物では無いです。

明治維新がなり、戦争の時代から平定の時代に移ると圧倒的指導力で軍事面を動かしていた西郷隆盛の存在が明治政府にとっては疎ましい存在になりました。
西郷を始めとして豊臣秀吉もそうだったが、天下を取ったら征韓論を唱えるんですよね。

川路は次の権力者の大久保利通と、仲良くは無い物の大久保の下で働きます。

こうして権力者から重宝されながら時代を渡っていましたが、内務省所属の警察組織という巨大な権力を抱えてから川路利良は”走狗”では無くなってしまいました。

誰かのために走り回っている川路には、純粋な正義感がまだ備わっていたのに、国・西郷・大久保に使わされている時は国の為を想う人物だったのに、いつの間にか自分だけを中心に添えるお山の大将へとなってしまいました。

さいごに

創作の部分もあるのでしょうが、歴史の裏側を覗いてしまった読後感です。
フランスが出てきたのが悪い!レ・ミゼラブルの時代とほぼ同時期なので、暗くなってしまうのは必然なんですよ!

それでも富国強兵という名のもとに、信念をもって築き上げた組織は表の部分は揺らぐものはありません。

こうして”川路利良”という方を知れたことを感謝いたします。

最後までお読みいただきありがとうございました。
したっけね!

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