こんにちわ、歴史と漫画好き。
いのまんです!
今回はハードボイルド歴史作家・北方謙三先生作「三国志」に登場する呂布奉先についてです。
この記事にたどり着いた方で呂布奉先を知らない人はいないはず。
赤い汗をかく赤兎馬にまたがり、方天画戟を操り、単騎でも隊としても負けない男。
ただイメージとしては丁原・董卓への反逆に劉備への裏切りと悪逆非道のイメージが付いて回るのが呂布という人物ですよね。
北方三国志の呂布はそのイメージを180度覆す屈指のカッコよさを誇っています!
これから書かれる内容は全て北方三国志に登場した呂布奉先です。
作品登場から20年以上は経過していますが、新たな呂布像を思い描いてみてください!
「北方三国志」~作品詳細
作者:北方謙三
出版社:ハルキ文庫
発行巻数:文庫全13巻
三国志には”正史””演戯”と2つの元となる物がありますが、北方三国志では基本的に”正史”を中心に描かれており、その中から北方エッセンスを加えています。
北方謙三先生はハードボイルドの巨匠ですので、漢たちが自身の覇業を求めて争う北方三国志の世界観は没入感が類をみない作品。
北方三国志・呂布奉先、3つの魅力
妻・搖を一途に愛した男
演戯では丁原の娘・貂蝉が元となり、連環の計によって董卓・呂布の仲違いを引き起こさせますが北方三国志では正史を元にしているので挑戦は登場しませんし、女性に惑わされるなんてことはありません。
むしろ最後まで妻に一途な男性として描かれています。
呂布は五原郡で産まれて幼少の頃から馬と触れ合い、母親を大切している描写がまず描かれています。
父はおらず、母親のいう事は絶対。
母親からは負けてはならない・泣いてはならないと言い聞かせられ育ち、粗野粗暴で野性味溢れる今までの三国志に出てきた呂布のイメージが幼少期の成長から伺えます。
10代中盤で母親を亡くして母の生まれ故郷の匈奴に母を埋めてから流浪の果てに丁原に仕えますが、その流浪の間に呂布は一目惚れした10歳年上の女性・搖を連れ去らい妻としています。
粗野で粗暴な呂布は女性の口説き方を知らず、連れ去る方法しか知りませんでした。
後に董卓政権で司徒となる王允曰く、瑶は決して美人ではなくむしろ醜女だと言われていました。
ただ呂布は瑶に母親の面影を重ねており、唯一甘えられる存在としているのがわかります。
北方作品はカッコよくて強い男が多く登場しますが、それと同時に孤独さも描かれることが多いです。
呂布も同じく武では最強の人物として描かれる反面、知の部分では劣り愛情に飢えた人物として描かれています。
史実通り呂布は2度の裏切り行為をしますが、2度とも妻・搖が絡んできます。
1度目の丁原への裏切りは丁原が瑶を都に呼び寄せる事を許さず、その隙をついて董卓は瑶を呼び寄せる事を条件に丁原を処分させます。
2度目の董卓裏切りは、呂布に対して老いた妻では不満だろうと言い新たな女性を寄こした事がきっかけで王允の諫言によって董卓を裏切っています。
どちらも浅はかではありますが妻・搖を思っての行動となっているんですよね。
妻・搖が亡くなった後に陳宮に女性をあてがわれますが、それでも最後まで瑶の事は忘れずにいます。
北方三国志の呂布は、この時代には稀有な一途な男性として描かれている事が魅力ポイントの一つです。
赤兎馬との友情
「人中の呂布、馬中の赤兎」
呂布の愛馬と言えば赤兎馬と言うのは周知の事実。
赤兎は一日に千里(400km)を駆けると言われた名馬で、作中でも比類稀な脚力を見せてくれています。
そして呂布にとって赤兎は馬以上の存在で”友”と呼べるのは唯一の存在でした。
呂布は劉備・関羽・張飛を一度に相手にできるほどの超人でしたが、2度の裏切りと粗暴な性格から人々には恐れられていました。
自分を利用しようとするもの、戦場でしか輝けない能力。
柵を嫌う呂布が最も自分を縛らずに自由になれる存在だったのは赤兎馬であったのでしょう。
呂布は愛する妻の元にも帰らず厩で赤兎と語り合いそのまま寝入ってしまうという描写が度々描かれますが、どんな馬よりも早く駆けて長い距離を走る赤兎にも老い等しくやってきます。
呂布最後の戦となる下邳の戦い、呂布は黒い鎧で身を固めた自身の騎馬隊を持って曹操陣営へと突撃
「突っ走るぞ、赤兎。丘の上にいるあの男。あの男だけが敵だ。そこまで、渾身の力で駆け上がろうぞ」
しかし曹操は徹底的に呂布を研究して新兵器を持って呂布の軍団を打ち破ります。
散々に打ち破られて下邳城に籠城する呂布でしたが、赤兎が呂布の身を守り傷を受けてしまいます。
傷は晴れ上がり熱を持ち城内にいる者では赤兎の傷を癒すことはできず、劉備陣営にいる成玄固という人物にお願いをします。
「赤兎の傷を見せてくださいますか、呂布様?」
「見てもらいたいのだ。今城門を開けさせる。」
戦の最中です。
自身が鍛え上げた騎馬隊で挑んだ戦で初めて敗戦して自分の誇りをも失いかけている男が、敵にお願いをしているんです。
戦場の誇りなどより、友・赤兎の命を救ってほしいと。
北方三国志は派閥を超えた友情が幾度となく出てきますが、人外との友情は呂布と赤兎のみです。
このシーンは序盤ながらも涙無くしては読めない名シーンと言えるでしょう。
呂布が劉備や曹操と共闘した未来
北方三国志を読むと、呂布は最初に持った主君が悪かったと思ってしまいますね。
丁原を葬り董卓の元に就き、董卓を葬り野心無き流浪の旅に呂布は出る事となります。
子が親を見て育つと言うように、呂布は董卓を見て育ってしまったかなという感想です。
呂布は善にも悪にも染まる真っ白で純粋な人間として描かれています。
だから一番初めに董卓が呂布を黒く染めてしまった事が裏切りと流浪の人生を歩むきっかけとなったのではないかと思います。
作中で劉備は漢王朝復活への志を説いて、曹操は自分の配下になるように勧めます。
「頼む、呂布殿。私に降伏してくれ。」
「私と呂布殿が一体になれば」
「やめろ、曹操。男には、守らなければならないものがあるのだ。」
「なんなのだ、それは?」
「誇り」
「おぬしの、誇りとは?」
「敗れざること」
敗れた呂布と曹操との最後の会話です。
これが董卓と出会う前にされていた会話なら呂布の人生はどのような変化があったのでしょうか?
きっと黒づくめの騎馬隊ではなく、白づくめの騎馬隊へと変貌を遂げていたのではないかと思ってしまいます。
最後に
非情にドラマスティックに描かれている呂布奉先。
北方三国志文庫版2~3巻に呂布は登場します。
イメージとは違うと思われる方もいるかもしれませんが、これも歴史が作りだりIFストーリーの楽しみ方の一つですよね。
ではでは、最後までお読みいただきありがとうございました。
したっけね!
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