こんにちわ、歴史と漫画好き
いのまんです！
今回は名作少女漫画『彼氏彼女の事情』の主人公の一人、有馬総一郎について書いていきます。
主人公宮沢雪野、有馬総一郎が県下一の学力を誇る公立校で、中学までの仮面を脱ぎ捨てて自分らしく生きると誓って成長していく学園漫画。
二人の主人公の内、有馬総一郎は家庭環境によって心の奥深くに沈めているパンドラの箱がありました。
有馬が抱えていた問題は、今も昔も変わらない世の中の闇の部分です。
有馬が何故、そこまで闇を育ててしまったのか？
有馬は何故、闇が表面へと出てしまったのか？
宮沢は何故、そうなる前に有馬を救えなかったのか？
人によっては怖いと思う有馬の一面ですが、この一面は有馬以外にもありえる表と裏の顔を除いていきます。
漫画『彼氏彼女の事情』の前半と後半
カレカノは前半の高校1年生編（10巻くらい）までと、後半の高校3年生編ではガラッとジャンルが変わる作品です！
庵野秀明監督作品のアニメ「彼氏彼女の事情」は、前半のコメディ部分の多い高校1年生編のイメージが鮮明に残っている方々多いと思います。
だからこそ、高校3年生編の有馬総一郎の変化が怖くて恐ろしく感じるのだと思います。
高校1年生編～少女漫画らしい学園ラブコメ！(1～10巻)
雪野と有馬は努力で作り上げた自分で本当の自分を隠している似た者同士でした。
しかし、この出会いをきっけけに本当の自分をさらけ出していく！
雪野と有馬は恋人同士になり、ラブコメ王道のすれ違いも楽しめたり。
雪野が新たに見せた一面は人間関係を大きく変えて、生涯においての友人と呼べる人物たちを作り上げていきます。
そして、運命の文化祭劇「鋼の雪」の発表を終えて高校1年生編は終了します。
この時期から二人の歩む道が静かに分かれていくことになりました。
高校3年生編～社会派ストーリー漫画（13～21巻）
時は高校3年の秋まで流れます。
生徒会長・宮沢雪野、生徒会副会長・有馬総一郎と二人とも生徒会で活躍したもののそのシーンは描かれずに文化祭も終わった10月ごろから物語は再開。
本当の自分をさらけ出すはずだった高校1年の春。
しかし、有馬は表に本当の自分を出せない隠し続けていたがいました。
有馬自身も触れないように隠し続けたパンドラの箱。
雪野は時間がかかったが有馬の深淵をのぞき込み、有馬を救い出します。
この物語の主人公はやっぱり宮沢雪野なんだと実感させられるだけの説得力があります。
有馬総一郎とは
頭脳明晰、眉目秀麗、文武両道で性格よく、非の打ちどころのない完璧な人間が有馬総一郎というキャラ。
剣道IH優勝、全国模試1位と誰の目にも明らかな実績を誇り。
医者の一族である有馬家で、病院経営をしている養父母に育てられた有馬は何不自由なく育ってきました。
元来人の雰囲気を読んで相手の要望に応じる能力のある有馬。
養子であるために遠慮がちな性格に拍車がかかり優等生の仮面をかぶる事となります。。
しかし、雪野と優等生であり続ける自分に疑問を持つようになり、雪野と一緒に本当の自分になる約束をします。
最初は上手くいっていた二人だけの世界で生活していたが、雪野は徐々に自分の世界を広げていく。
しかし有馬は自分の全てをさらけ出すことが出来ず、雪野に出していたSOSのサインも雪野には気が付いてもらえませんでした。
そして遂には雪野にさえも心を閉ざしてしまいます。
有馬総一郎が抱える闇
本当の有馬は父親そっくりで、苛烈です。
本当の自分をさらけ出す。
最近は個人が尊重される時代となり、”本当の自分”という言葉も珍しい言葉ではありません。
連載開始は1996年、前年1995年に”新世紀エヴァンゲリオン”が放送されて碇シンジのような
「もっと僕を見てよ、僕の事を理解してよ」
個人のパーソナルな部分を呼びかける作品が人気となりました。
では、”本当の有馬”とは何だったのか？
本当の有馬は優しく親切で勉強ができる。
これがニセモノというわけでは無いですが本当の有馬はもっと苛烈です。
高校1年の夏休み、IH出場となった有馬は合宿・大会で半月以上の間雪野と会えませんでした。
久しぶりに会った有馬と雪野ですが、雪野は照れてしまい有馬を避ける態度を取ってしまいます。
「どれだけ待ったと思っている！もう待つつもりはないんだからな！」
物凄い剣幕で雪野に言い寄りますが、この時は雪野も有馬の本心に気が付きます。
雪野も、”有馬の孤独”の感情をこの時点では理解できています。
十波の宮沢雪野への対応の件。
よく知らない人物が宮沢と親しげにする様子、有馬は今まで見せた事の無い激しい表情を十波に見せます。
これは有馬の独占欲、愛情を向けた人が見知らぬ誰かと親しくすることに嫉妬してしまっているという事です。
有馬は極端に雪野という存在が離れてしまう可能性を恐れている様子がわかります。
有馬は幼少期に実の母親からひどい虐待を受けていました。
最終的には命も危ぶまれるところで義父である有馬 総司に助けられています。
この時の記憶が残っており、心に根深い心的外傷を持つこととなります。
以後、義父母からはそれまでとは考えられないほどの愛情を注がれています。
有馬は、義父母のため、両親から受け継いだ血を否定するために、”絶対に完璧な人間”になる事を自分自身に誓っています。
本来なら両親から無償の愛を受けて育つはずの感情が、無理やり自分を律する事で愛情を受け入れることが出来ずに、自分自身の隠れた感情へと成長させてしまい自分自身が知らなかった”黒いパンドラのの有馬”を育てる事となってしまいます。
雪野は有馬が怖かった？
高校1年生の文化祭で雪野は有馬に
「一番狙うのもう辞める！」
と宣言します。
雪野はもっと広い世界を見るために勉強以外にも視野を広げるという事を言っています。
有馬も同様に雪野と一緒に視野を広げるようにすればよかったのですが、雪野の言葉は有馬にとって拒絶の言葉に感じたのだと思います。
そこから約2年間、有馬総一郎は”完璧な有馬総一郎”の仮面を被り直すことになります。
一緒に歩み、守ってくれると思った宮沢雪野がいなくなる事は、有馬にとって暗闇の荒野を一人で歩かなくてはならない事だったのではないでしょうか？
有馬総一郎という人間にそんな余裕も勇気もありませんでした。
3年になりTVに出演した有馬を見て、実の母がコンタクトを取りにきます。
有馬にとっては思い出したくない過去の人物、親にも友人にも知られないように隠そうとすればするほどに”完璧な有馬総一郎”が崩れていきます。
雪野は、2年ぶりにあった有馬の事を
「まるで知らない人、今の有馬を好きだという自信がない」
2年間”本当の有馬”を闇の中に閉じ込めていた有馬総一郎は、無感情で暗く冷徹な人間となっています。
親友の浅葉は有馬が女性だったら本気で愛せる人だったと思ったのは、傷ついた心と寄り添うだけの余裕のある人だったからでしょう。
1年の時の雪野が悪かったわけでは無いと思います。
雪野本人は自分が子供だったから有馬の本心に気づけなかったと言っていますが、有馬自身が雪野と歩む選択をできるのがベストだったと思いますが、有馬の持つトラウマがその決断ができないほどに根深い物でした。
有馬が本当に欲しかったもの
「好きと言える自信がない」
と思った雪野ですが、もちろん有馬を見捨てたりはしません。
自暴自棄にもなり自分自身を傷つけていく有馬、雪野さえも追い詰めていきます。
しかし雪野の不屈の精神と大きな愛情を受けたことで、有馬は雪野と本当の意味でわかりあえるようになります。
”怪物と戦うものはその過程で自らが怪物とならぬよう気をつけよ。深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ”
「『ミイラ取りがミイラになる』という状況にならないよう注意しろ」という意味ですが、雪野は有馬の暗い部分に引っ張られることはありません！
自分を含めた感情を冷静に分析し、問題を解決する処理能力はこの2年間でさらに洗練された雪野の最も長けた能力。
この問題処理能力を生かして、有馬のトラウマの克服を図った行きます。
「好きなんだ 雪野のことが好きなんだ でも ぼくでは幸せにできないと思って言えなかっ……」
有馬は人を好きになってはいけないと考えていたのですが、有馬の本当の心は人を愛することを求めていました。
不器用にも完璧を求めた有馬の心を、後押しできるだけの成長を遂げた雪野。
2年越しに共に歩み始めた二人は感情が揺れ動くこと間違いなしです。
最後に
ネグレクトにあった子供は、一説によると愛情を求めるよりも愛情の求め方がわからないといったケースもあるようです。
「幼児虐待を受けた主体が成長の過程でどのような人格を身に付け、どのような契機で回復しうるかということを見事に描き出している」
と評論家の方が言っている記事がありました。
精神的トラウマを抱えた作品を読んで、そのキャラクターを”怖い”と感じる人もいると思いますが、”怖い”に取り込まれずにそのキャラクターを理解するように見守ってあげてほしいです。
現実でも大なり小なり似たようなトラウマを持った方はいると思います。
ではでは、最後までお読みいただきありがとうございました。
したっけね！
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