こんにちは、歴史と漫画好き。
いのまんです。
今回は、小説版「鬼人幻燈抄 明治編 君を想う」を読んだ感想・ネタバレ有りで書いていきます。
こちらは鬼人幻燈抄シリーズの7作目にあたります。
甚夜と娘・野茉莉の切ない終結が、涙無しには読めませんでした!
ベタと言えばベタなんです!
けどベタって王道じゃないですか!?
王道だから泣いてしまうんですよね・・・
鬼と人との親子の結末は、あまりにも残酷すぎでした。。。
「鬼人幻燈抄 明治編 君を想う」~作品詳細
作者:中西モトオ
出版社:双葉社
ジャンル:和風ファンタジー
発行巻数」既刊8巻(2021年11月現在)
「鬼人幻燈抄 明治編 君を想う」~あらすじ
明治十六年(1883年)。
葛野を出て実に43年、甚夜はついに行方知れずとなっていた鈴音と対峙することになった。
鬼神へと至ろうとする妹との再会は、甚夜だけでなく彼の周りの人々の運命をも大きく変えることになる。
人よ、何故刀を振るう――平成までの長い旅路の折り返し地点で、甚夜が出した答えとは。
「鬼人幻燈抄 明治編 君を想う」~感想
甚夜とマガツメ
本の帯にも書かれているのですが、甚夜と妹・鈴音が久しぶりの再会となります。
前巻の百鬼夜行の時点で、マガツメと名前を変えた鈴音の存在は明らかになっていましたが案外早い再開でした。
けど物語は折り返し地点とも言われてますし、ここら辺でマガツメの存在を確かにするのは物語として重要ですよね。
明治編に入ってマガツメという存在が「マガツメの娘」である向日葵や地縛によって明らかになってきますが、じゃあなぜ今更になって動いたか。目的は何なのかが、いまいち不明でした。
その意味をマガツメ本人に問いただした時に
「決まっている、割りに合わないからだ」
本当に意味不明でした。
割に合わないって、何が割に合わないのか?
けど、よく考えなくても単純でしたね。
鬼人幻燈抄は良い意味で王道なんです。
兄である甚夜が自分以外の事を考えている時間が割に合わないって言っているんです。
「夏宵蜃気楼」で、マガツメはめちゃくちゃかまってちゃんだと思いましたが、ドストレートでくると思いませんでしたよ。
江戸編初期では、甚夜の意識の中が100ある内100が妹・鈴音に対することでした。
しかし義妹になったかもしれなかった奈津との出会い、親友と呼べる存在の直次、蕎麦屋・嘉兵衛の主人と娘のおふうとの出会いによって甚夜の意識は徐々に鈴音以外にも向くようになってきていました。
鈴音にとっては憎悪でも何でもいいから甚夜には自分の事を考えていてほしい、憎まれることすら気持ちいいとすら思っている真正かまってちゃんだったなんて想像の斜め上を通り過ぎていきました。
マガツメの異能は「心を造る力」で、マガツメが捨てた心の一部である「甚夜を大好きな心」から生まれたのが長女・向日葵でした。
まさか明治編で一番初めに出会った少女が、こんな役回りになるなんて予想だにしていませんでしたね。
甚夜と交流のある者たちの末路
甚夜の中に自分の存在が消えていく事が割に合わないと言っていたマガツメですが、7作目でやってること本当にエゲツないです。
人を鬼に変える「ゆきのなごり」で甚夜と鈴音の父親を鬼に変えて甚夜自身に斬らせていたり(しかし、自分の事を気味が悪いと言って捨てた父親に報いを与えるのは仕方のないことかと思いますが)、そしてその場面を義妹になるはずだった奈津の目の前で鬼となり父を斬る姿を見せることとなって関係性を断ち切らせています。
しかも鬼に変える酒には、かつての想い人・白雪の遺体を使って作られた酒です。
甚夜が鬼であること知りながらもなお親友だと言ってくれた三浦直次、彼が瀕死のふちに鬼へと変貌させて仕舞いには人を斬らせて、甚夜に斬らせています。
これまでも甚夜につらい選択をさせてきたのに、今作ではさらに酷い仕打ちをしています!
まず京都の地で親友と呼べるまでに交流を深めた3代目秋津染五郎を手にかけています。
この事はほんの序章でした。
マガツメの本当の狙いは、過去と現在を選択させること。
3代目秋津染五郎の弟子である宇津木平吉は、東菊という鬼に依頼されて人探しをしていましたが、東菊は探し人本人が誰なのかを知りません。
ここは予想できました、おそらく甚夜だろうと。
けど、予想できなかったのは東菊の容姿は白雪でした!
葛野の地で鬼となった鈴音は首だけを持ち去っていますが、その首をもとに白雪という存在を鬼としているのです!
東菊は、白雪の本人ではないですが存在としては瓜二つの存在です。
じゃあ誰と選択させようとしているのか
野茉莉です!
今甚夜が最も意識を向けているであろう、甚夜の娘とかつての想い人とを選択させようとしています・・・
本当にひどすぎます・・・
東菊の目的が切なすぎる
東菊は別名・ミヤコワスレ、「少しの間だけでも都のことを忘れることができる」
白雪の容姿の鬼・東菊の能力は、記憶の消去・改変でした。
東菊は、甚夜にかかわるすべての人にある甚夜の記憶を消去する事。
つまり、娘・野茉莉の記憶も消去します。
「夏宵蜃気楼」で野茉莉は、年を重ねる自分と不変の甚夜がどうすればずっと一緒にいれるのかを深く深く考えてきたのに、その想いを無下にする行いです。
読者としても子供なんて持つとは思えなかった甚夜にできた娘、どれだけ愛してきたのかは読者だからこそわかる気持ちです。
そんな愛してやまない娘の記憶を奪う事がどれほどひどいことか・・・、泣くしかありませんでしたね。。
想い人である白雪を2度も辱めて、20年育ててきた娘の記憶を奪われて。
毎回言ってます、切なすぎる。
最後に
明治編は本当に名作と呼ぶにふさわしい内容でしたね。
短編の雨夜鷹も、この巻を読んでからだとまた印象が変わりそうです。
ではでは、最後までお読みいただきありがとうございました。
したっけね!
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