こんにちは、歴史と漫画好き。
いのまんです。
今回は、小説版「鬼人幻燈抄 明治編 夏宵蜃気楼」を読んだ感想・ネタバレ有りで書いていきます。
こちらは鬼人幻燈抄シリーズの6作目にあたります。
今回は甚夜と野茉莉の親子の話。
鬼と人の親子だけど、互いを想う気持ちは変わらなくて不安にもなるし心配もしてしまう物ですね。
二人の優しさと懐かしい江戸の話が混じり、良き蜃気楼を見せていただきました!
「鬼人幻燈抄 明治編 夏宵蜃気楼」~作品詳細
作者:中西モトオ
出版社:双葉社
ジャンル:和風ファンタジー
発行巻数」既刊8巻(2021年11月現在)
「鬼人幻燈抄 明治編 夏宵蜃気楼」~あらすじ
明治十年(1877年)。
甚夜は、思春期を迎えた娘の野茉莉との接し方に手を焼く日々をおくっていた。
そんな中、すっかり鬼そばの常連客になった染吾郎が、百鬼夜行の噂話を仕入れてくる。
夜毎、京の町を練り歩く数多の怪異――その中心にいたのは、五年前、甚夜と兼臣が対峙して苦戦を強いられた鎖を操る鬼女だった。
いよいよ災厄の女、マガツメが動き出す。
マガツメの娘と兼臣の正体
蕎麦屋・鬼そばの居候・兼臣は退魔師の南雲和沙の指南役でした。
しかし和沙は地縛にやられてしまい、甚夜に地縛の討伐を依頼しますが失敗して数年の時が流れます。
兼臣の外見容姿は17歳前後の少女で、数年の時を経てもその容姿に変化はありません。
変化が無いと言えば、甚夜も同じく鬼となった18歳の頃の外見から変わっていないので兼臣という少女も鬼なのかと思いましたが違うようです。
それは後述で真相がわかります。
兼臣にとっての仇相手、地縛が百鬼夜行を引き連れて練り歩いているとの噂が立っています。
3代目秋津染五郎も入れての3人で討伐へ向かいます。
鬼・向日葵と地縛が百鬼夜行を引き連れて現れると、甚夜・染五郎は下位の鬼と対峙して兼臣は南雲和沙の仇である地縛と一騎打ちに。
明らかに弱い鬼達は戦いを想定した鬼ではなく、甚夜を誘き出すための囮でした。
「マガツメの娘」と呼ばれる向日葵・地縛はマガツメの心の一部で、捨てた心を元に作った鬼だったから娘と呼べる存在だという事です。
そして「マガツメ」の正体は、甚夜の妹・鈴音。
何となく察しは着いていましたが、囮を使ってまで甚夜をおびき出すなんてめちゃくちゃ”かまってちゃん”です!
葛野の地で鈴音はずっと我慢してきたからでしょうか?
兄に対してわざと足跡を残して「自分を見つけて構って」と言ってるみたいですね。
マガツメは心を造ろうとしていると言っていますがどうゆう事なのか?
兼臣は地縛にあっさりと〇されてしまいます。
地縛との戦いで兼臣の肉体は敗れ去りますが体は起き上がり地縛を退治することに成功しています。
兼臣は妖刀・夜刀守兼臣と同じ偽名を名乗っていましたが、実際は刀自体が南雲和沙の肉体に憑依していたという事でした。
だから年も取らないし、瀕死の状態でも動けていた。
刀自体に意志を持つなんてことは予想外でしたね。。
「鬼人幻燈抄 明治編 夏宵蜃気楼」~感想
鬼人幻燈抄の夏宵蜃気楼編は兎にも角にも親娘のお話でした。
人非ざる者と人との営みというものは、江戸編の蕎麦屋嘉兵衛の主人と娘であり鬼でもあったおふうで書かれていましたが、この二人の話はあくまでも脇の話。
今回は甚夜と野茉莉、読者としても幼子の時から野茉莉の成長を見てきて愛着も沸いていて自分の娘のように思ってしまっているといっても過言ではないはずです。
その野茉莉も14歳、少女と呼ぶには大人で女性と呼ぶにはまだ幼いけど年を重ねていく野茉莉にとって親子でいられる時間は限られています。
実際の世の中でそんな経験をすることはあり得ない、鬼人幻燈抄を興味深く読めているのはこの時間の流れなんですよね。
読者の視点としては年を重ねていく登場人物たちがその時代を通してどのように生きていくのかを楽しんで読んでいる第三者的視点ですが、甚夜の場合は当事者でありながらも流れていく時間に捉われない命を持っていることから読者側からの第一人称視点を持ち合わせています。
いつまでも親子でいてほしい親子でいたいと思いながらも、時の流れがその事を許してくれません。
夏宵蜃気楼では、野茉莉が成長していくにつれて甚夜との関係性が変化していくという野茉莉の気持ちが如実に描かれているのが面白くも切なくなりました。
野茉莉は、江戸の蕎麦屋・嘉兵衛でたむろしていた嘉兵衛の主人、おふう、直次、奈津、善治たちの夢を見ます。
秋津染五郎の弟子・宇津木平助が江戸に行ったときにとある商家からもらった野茉莉への土産物が夢の原因です。
その商家は須賀家、甚夜の生家で義理の妹になるはずでもあった奈津のいるお店。
甚夜が鬼となった奈津の父親を切り、その後縁も切れてしまった相手から土産物でした。
その想いが籠っていたことから野茉莉に夢を見させています。
この時の野茉莉の気持ちは、
「父にとって、私は仕方なくできた娘」
でした。
甚夜は面倒見がよく、兼臣や朝顔といった行き場のない人々に手を貸すようなお人好しで、そのお人好しの一面から自分も仕方がなく育ててくれたと思っているとの事。
ここまで読んでいる読者の方なら、野茉莉が思っている事は最もな事だと思いますよね。
実際に甚夜は誰にでも優しいから。
けどその分、甚夜がどれだけ野茉莉の事を愛していたかも知っているのも事実です!
野茉莉は夢の中で奈津と会い、奈津の甚夜への想いを聞いて、自分の想いに決着をつけています。
甚夜も野茉莉の事を考え愛して、野茉莉も甚夜の事を想い父として尊敬している姿がたまらなく感動的に描かれていました!
二人で買い物に行ったときに店の人から恋人同士だと勘違いされています。
親子としての時間が残り少ないことが描かれていますが、野茉莉に悲観的なところはありませんでした。
娘として、妹として、姉として、母として成長していく野茉莉を甚夜と共に見届けていきたいですね!
最後に
江戸編から登場してきた人物がどんどんと年を重ねていき、染五郎も老齢の域に達してきました。
甚夜は見た目は18歳のままでも、実年齢は50代半ばとなり精神と見た目の乖離が出てきているのが読み取れます。
手塚治虫の火の鳥で出てきた永遠の命を持った男の話を思い出しながら甚夜が年を重ねていくの読んでいます。
ではでは、最後までお読みいただきありがとうございました。
したっけね!
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